| 惹かれるカタチ いま、ウチの息子は、まるい輪のカタチが大好物です。 セロハンテープや梱包用のガムテープの類を持ち出して来ては、 「あっ、わ〜っ」と大声を出して、空中に人差し指で輪を描きながら 輪のカタチがあったよ、と私達に知らせてくれます。 いろんなところにある、まるい輪のカタチを探して、あちこちを探検します。 彼がいつものように「あっ、わ〜っ」と指差すその先を見ると、 あるのは壁に掛けてある時計であったり、近所の公園にある円形の砂場であったり。 絵本に書かれてある文章の、最後にあるちいさな句読点のまるに沿って 人差し指を、ちっちゃく、ぐるぐるとやっているのを見たときには、 あ、これもまるい輪のカタチだなあ、と気付かされたりしました。 彼にとって、いま、惹かれるカタチです。 欲しいモノやお気に入りのモノを並べてみると、共通の特徴がある、という風に なんだか惹かれるなあ、というカタチは誰にでもあります。 自分達にも、そういえば時期毎に気になるカタチがありました。 仕事を始めた頃の時期に、無性に作り留めておきたいカタチがありまして、 そうして出来上がった作品には、「LIFE」という名前をつけました。 家のようなカタチをたくさんつくって、それを色々な方法で壁面に展示しました。 なぜそのカタチが気になったのか、あとから時間を経た後には、色々説明がつきます。 その頃の身の回りに起こった出来事や、それに対してどう考え、どう感じたのかを 落ち着いて、客観的に順序立てて思い返すことができるからです。 けれども、なんだか惹かれるなあ、と感じたそのときの瞬間には、 「なんだか、」という言葉を使わなければ、惹かれる理由は説明できないはずです。 「LIFE」をつくった理由も、数年経ったいま、思い返してみますと、 あのカタチは、不安と希望が渦巻くなかで独立して得た仕事場のカタチであり、 結婚して住み慣れぬ場所でこれから生活してゆく住居のカタチであり、 素朴な暮らしをしたいな、という願望から惹かれた、シンプルなカタチであり、 そんな日々の暮らしを大切に過ごしてゆきたいという気持ちを鉛筆で描写して、 等身大の暮らしを表現しようと、目線の高さを合わせるために壁面に展示する、 と、こんな感じです。 客観的に順序立ててみると、その理由に自分でもなるほど、と納得させられます。 けれど、当時、なんだか無性に作り留めておきたい、と強く思ったそのときには 理由なんてありません。 「なんだか、」そう感じて、そうして出来上がった「LIFE」なのでした。 のちに、まるい輪のカタチが大好きだった事をウチの息子がもし憶えていたなら、 ちょっとその理由を聞いてみたいものです。 幼い頃の出来事ですので忘れてしまうかも知れません。 それなら私達が、空中に人差し指で輪を描く1歳半の息子の姿を 憶えておいてやりたいものです。 |
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「LIFE」描写 |
(2004年2月) |