「櫂をつくる」について


印象に残っている課題制作がひとつあります。

飛ぶ、というテーマで立体をつくりなさい、
まだ学生の頃、そんな課題の授業がありました。
素材は薄いアルミ板です。飛んでいる様子を想像しながら、
イメージをふくらませてカタチにしてゆく作業です。
びゅーん、ぱたぱたぱた、ふわりふわり、
色々な擬態音を思ってはカタチに置き換えてみるのですが
なんともしっくりしないのです。

そのとき、ふと思いついた考えは
飛ぶ状態じゃなくて飛ぶモノをつくる、ということでした。
まずは、飛びそうなカタチをつくってみよう、と思ったのです。
そこで、薄いアルミ板になだらかな曲線を引いて、
山折り谷折り、次第に立体的に組み立てて、そうして
おおきな流線形の翼、の様なカタチをつくったのです。

課題提出の日、天井から吊すなど、重力の軽い作品が多い中で、
自分は、ごろん、と作品を作業台に置いた状態で提出しました。
課題の評価がどんな風だっだのか、まったく憶えてはいません。
けれども、その時のアルミ板で出来た流線形の翼は、飛ぶ、という言葉に
とてもしっくりする、となぜか強烈に感じることが出来て嬉しかったのです。
このことは良く憶えています。そして非常に面白い経験でした。


飛ぶ、の課題制作から五年後、
グループ展に「OAR(オール)」という作品を展示しました。
舟を漕ぐ、櫂のカタチです。
鑑賞される方が、こんなオールを漕いで、どんな舟がゆくのだろうか、
何処へ漕ぎ出すのかな、と想像して貰えれば楽しいな、と思ったのです。
思うに、あの時、薄いアルミ板で流線形の翼をつくった自分も、
当時は上手く説明出来なかったけれど、実はこんな風に
こんな翼は一体どんな飛行線を描くのだろう、と想像を巡らせる楽しさを感じて
嬉しかったのでは、と、少しくすりと笑いながら思い出したりしたのでした。


うつわのカタチを構想するとき、これで何を食べようかな、
どんな風に盛ろうかな、と想像を巡らせています。
(2003年9月)

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