【ならんだカタチ】


展覧会や公募展作品、展示しました作品色々。
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雲形器(ウンギョウキ)    岩本道明 2008年制作 50×30×h8p
                           (第63回呉市美術公募展呉市長賞)


ふんっ、と鼻息も荒く、抱える
土の塊を平板に延ばします。
投げて、叩いて、流して。
延びたい様に延びた土は、
やがて 雲のカタチへ。

土壁に囲まれた仕事場で、
土壁に掛けて眺めてみると、
カタチは土壁に染み込む様に
同化してしまいました。



円弧  岩本道明 2008年制作 23×63×h8p
                             (第60回広島県美術展入選)


 このカタチは、弧のカタチ。
 直径170cm、ひとの背程の帯状リング、その一個所をハサミで
切り取ったような
カタチ。

または風を受けて
飛ぶ飛行体、
その翼部分だけを
取り外したような
カタチ。


赫赫鉢(カッカクバチ)  岩本道明 制作 直径32p 高22p
                             (第59回広島県美術展入選)

にょろり、と紐状の土を、丸く積んでゆきます。手びねりと呼ん
でいるその成形方法は、まるで、長い階段を一歩一歩上って
ゆくような、ゆっくりとした工程を辿ります。

表面には、指跡がいくつも残ります。
何百もの指跡の
凹みは、指が土を
押した回数が刻ま
れているのです。

何故か愛おしくて
手元に置いてある
うつわです。




縞縞赫赫盤(シマシマカッカクバン)   岩本道明 制作 35×67×h7p
                      (第61回呉市美術公募展呉市教育委員会賞)


かくかくしかじか、
しましまかっかく。

縞模様を刻んだ
四角いフォルムの
硬く重いカタチを、
丸く柔らかそうな
ネコ脚で軽々と
支えます。


線文刻盤  岩本道明 2001年制作 31×58×11p
                             (第52回広島県美術展入選)


ごっつい陶の板。
びっしり刻んだ
まっすぐ線文様。

ずっしり重いモノを
ひょっこり支える
ちょこんと一本足。



稲妻文様板皿  岩本道明 1998年制作 31×62p
                             (第50回広島県美術展入選)


数種類の異なった
土の化粧を、細い
筆でのせてゆき、
模様をつくります。

ちいさな模様が
集まってできる、
おおきな模様。




LIFE」  岩本道明 1999年制作  壁面60×120p
        (ギャラリーくれえばん「岩本道明京子陶展」展示)


家のカタチです。

制作当時、なんだか気になって仕方が無かったこのカタチを、
ギャラリー壁面にずらりとならべて展示しました。

とても好きな作品のひとつです。大変印象に残っています。



CRAY BOX」  岩本道明 1999年制作 床面35×240p,高58p
              (ギャラリーくれえばん「岩本道明京子陶展」展示)

箱のようなカタチをつくり、ならべてみました。

低温で焼き締めた四角いカタチの表面は、固そうで柔らかく、
その直線は、ぴしっとまっすぐのようでふわんと曲がっていて。

見る視線をリズミカルに動かしてみたい、そう思ってつくりました。




不随意」  岩本道明 1994年制作 360×80p
          (京都マロニエギャラリー「塔陶展」ゼミ展)

例えば心臓などの、意志と関係なく自動的に運動を起こす
筋肉のコトを、不随意筋と呼ぶのだそうです。

気付かないうちに、ある情景が強く目に焼き付いてしまうコト、
自分でも想像し得なかった方向に感情が揺れ動いてゆくコト、
そんな、不随意な所作に関心がありました。そうして出来た
この作品です。

板状の土をぴたりとかさねて焼成すると、不随意な模様が
現れます。確かにまっすぐ直線に切った土は、窯のなかで
微妙に歪んできます。土は、不随意です。




「OAR」  岩本道明 1995年制作 高220p
        (京都BAL ANNEX GALLERY
         「5Watt-3 あかり5人展」展示)


素材は、木です。
舟を漕ぐ、櫂のカタチをつくりました。

櫂のカタチの表面は、お好みの色を
アクリル絵の具で気ままに彩色です。
上の方に付けられたスポットライトで
OAR(オール)の文字を照らします。

オールにライトがあたっているのを見て
「こりゃ、オールライト(All right.)だなぁ」
なあんて駄洒落を思い付いたのは、
作品展が終わってからのことです。

「OA R 」について、散文集「櫂をつくる」も是非ご覧下さい。



「3・3・4」  岩本道明 1994年制作 床面80×230cm about
           (京都市美術館「京都精華大学卒業制作展」)

なが〜い板皿の様なカタチの集まり。
会場の美術館、床面は古い板張り。板目に添ってならべます。
太い刷毛で白化粧土をとっぷりと乗せて、ゆるい色描き。
「思いつくまま描く」という行為に興味があった頃。

ただ、描く。
ただ、ならべる。
3・3・4のリズムで置いてみる。




「THE SECOND HAND」
        
岩本道明1993年制作
          壁面230×170cm about

          (京都Art Stadium 309「七陶展」)

つくったのは、秒針でした。
時間を刻々と刻み続ける秒針に
興味が湧いたのです。

カチコチ、カチコチ、秒針が進む度、
さっきの一秒のときの気持ちは、
次の一秒のときの気持ちへと
刻々と変化してゆきます。
「THE SECOND HAND」について、散文集「時間と秒針」も是非ご覧下さい。



LIGHTING」
    
岩本道明 1993年制作
      15×90×45p

      (京都キャピタル画廊
          「5Watt展」展示)



オブジェの中には、
蛍光灯が光ります。

適当なラインで
切り抜いた部分から
洩れる光。
LIGHTINGの文字を、
ライティング。

重たい素材を、軽く。
重厚だけど、ポップに。



「有翼の」  岩本道明 1993年制作 高140cm
           (京都マロニエギャラリー
            「京都精華大学陶芸専攻展」)


気になっていたモチーフ、翼。
飛ぶ、のイメージ。

何をどうすればカッコイイのだろう、
解らないまま色々やってた頃。

ズッシリ重い陶作品、その重量感を
操りたくて試したカタチです。
尖った一点を床につけ、高い天井から
ワイヤー吊りして展示しています。

がむしゃらの頃。懐かしい。


「ならべる」行為について  岩本道明


制作したモノを見せるとき、その空間にキレイにならべてみる、
というのは、どうやら自分のクセのようです。

同じ要素を含んだ、同じ様なカタチがずらりならんでいる光景に
昔から惹かれます。例えば、秦始皇帝の兵馬俑遺跡などは、
実際に現場で見ると大変おもしろいのだろうな、と思うのです。

どうして、ならんでいる光景をおもしろいと感じるのでしょうか。
それは、リズミカルな視線にさせるおもしろさと、もうひとつは、
同じ様でもちょっと違うぞ、どこがどんなふうに違うのだろう、と
ひとつひとつを観察し、気付くコトのおもしろさ、があるからです。

あえて惹かれる理由を考えてみると、そんなトコロです。


筆 / 岩本道明
written by Michiaki Iwamoto


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