「土のスピード」について


白い画面に何とはなく描きなぐるのが好きで
いまも何種類かの画材を使っています。
色鉛筆にしても、ねちゃ、とする線が描けるモノや
描いた線が水に溶けてうすくのばせるモノや
それぞれ面白い特徴を持っていて、楽しく使えます。
絵の具は、アクリル絵の具を使っています。
油絵の具は、乾くのが遅いので嫌いです。
その点、アクリル絵の具は何しろ素早く乾くので、
次の仕事がし易いのです。一気に仕上げます。
アクリル絵の具の、素早く乾くあのスピードが好きです。

油絵の具を好んで使う人にとっては、きっと
じっくりと時間を掛けて固まっていく、悠々としたスピードが
たまらない魅力のひとつなのだと思います。
作者は、悠々としたスピードに乗っかって仕事をするでしょう。
そんな風に、色々な素材には、
それぞれに持っているスピードがあります。

例えばガラスは、溶解から凝固まで、ほんとに間がありません。
そのわずかな時間に、瞬時の判断力で作品を仕上げます。
例えば木彫は、木が育ち変化してきた長い年月の続きを、
じっくりと対峙して、熟考の末、作品を仕上げる事が出来ます。
結果、ガラス作品には緊張感やみずみずしさを感じ、
木彫の作品展には、ゆったりとした時間を感じられるのだと思うのです。

ガラスの作家や木の作家、
布の作家、鉄の作家、
樹脂で作る作家、コンピューターを使う作家、
流木でつくったり、例えば氷を彫る作家。
それぞれ素材のスピードに似合った作家が、作品を仕上げていきます。
作家は、自由勝手に素材を選び取っている様でいて、実は
素材の方が作り手を選んでいるのかも知れない、と、
ふと思ったりもします。

さて、土のスピードは、どんな風でしょう。


(2003年5月)

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