FOR BEGINERS
ビーチ・ボーイズについての概略


ビーチ・ボーイズって、サーフィンのバンドでしょというのが、一般的な捉えかたになっていますが、実際には実に多様な音楽性を持ったバンドなのです。ただし、時代が早すぎたのか、サーフィン系以外はヒットしませんでした。昔も今も、夏のBGMを期待され続けてきたが故のことでしょう。そこで、約30年のレパートリーを6つのパートに分け、ここでご説明したいと思います。(この分けかたは、わかりやすいよう、私が独自に考えています。定説とされたものではありません。)

今BB5(ビーチ・ボーイズ)に興味を持ったあなたはしあわせです!

2000年には長らく廃盤だった70年代以降のアルバムが再発され、これによって輸入盤であればすべてのカタログが入手可能になりました。日本盤のSUMMER IN PARADISEは廃盤ですが、あとは探せば入手できます。さらに98年に発売されたULTIMATE CHRISTMASには70年代の未発表クリスマスアルバムの音源が丸ごと収録されるなど、過去の音源の掘り起こし作業も進行中! 今、興味を持ったあなたはほんとうにしあわせです。


第1期 サーフィン・コンシャス(1961-1965)

 元々、ビーチ・ボーイズは、サーフ・ミュージックをやりたくてスタートしたのではなく、いわゆるポップスやコーラス・グループを目指したバンドでした。それが、オーデション時にたまたま"SURFIN'"という曲を演奏し、"新しい"と判断されたのが、すべての始まり。THE BEACH BOYSと勝手に名前も変えられ、サーフ・ミュージックのバンドという売り方をされます。

 この初期4年間は、レコード会社からの要求で、常にサーフィンホット・ロッド(クルマをテーマにした曲)の曲を作ることを求められます。1年にアルバム・シングルともを3〜4枚づつ発表していたこの時期は、ブームが終わる前に稼いでおきたい、レコード会社の思惑があったのです。

 バンドのリーダー、ブライアン・ウイルソンは、すべての楽器を独学でマスターし、この時期のほとんどの曲とアレンジを作り、レコード会社の要求に対応しました。ベスト盤などには収録されていない、サーフィン以外の曲に、彼が本当は何をしたかったのかが、刻銘に刻まれています。

 一度、ベスト盤ではなく、アルバム単位で聴いてみて下さい。幸いなことに、この時期のアルバムは比較的手に入りやすくなっています。サーフ・ミュージックが好きな方や、ディック・デイルなど90年代以降のサーフィン・ブームからスタートした方には、もちろんおすすめです。

【この時期の主なアルバム】

  1. SURFIN' SAFARI 1962(デヴュー・アルバム)
  2. SURFIN' USA 1963(インスト多し)
  3. SURFER GIRL 1963(ブライアンの初のセルフ・プロデュース。まあまあ)
  4. LITTLE DEUCE COUPE 1963(以前の曲も含んだホット・ロッド集)
  5. SHUT DOWN VOL.2 1964(ホット・ロッド中心。部分的に光る部分が見えてきた)
  6. ALL SUMMER LONG 1964(アルバムとしての完成度をはじめて追求)
  7. THE BEACH BOYS' CHRISTMAS ALBUM 1964
    (クリスマス・アルバム)
  8. BEACH BOYS TODAY!1965(初期の最高傑作との声あり。若さあふれるスペクター・サウンド)
  9. SUMMER DAYS(AND SUMMER NIGHTS) 1965(夏向きの爽快なサウンドと内省的佳曲の好バランス)

1〜3はサーフィンの比率がかなり高い。3からブライアン・ウイルソン自身のプロデュースとなる。
4、5は、ホット・ロッドを主体としたアルバム。 6、8、9あたりが、単にサーフィンだけでなく、1枚のアルバムとしても完成された出来となっています。特に8の後半あたりでは、ブライアンがもっと純粋な音楽をやりたかったことが良くわかります。
7は、有名なクリスマス・アルバム。98年には、このアルバムと、70年代の未発表クリスマスアルバムとがカップリングされたCDも正式に発売された。


注釈…ベスト盤の編纂について

日本では、昔からベスト盤というと、ヒット曲+アルバム収録の評判の良い曲という方法論ですが、それはひとつには、3年に1回、ノルマ的にベストを出すという慣習のせいかもしれません。アメリカ、特にビーチ・ボーイズに関しては、残念ながらベストというとヒット曲オンリーの構成。日本独自編集のものもありますが、やはりヒット曲を外すことは出来なかったようです。したがって、ベスト盤収録曲のみが、良い曲と考えると危険です。私はかつて、そう捉えていて、ビーチ・ボーイズを単なるサーフ・バンドと思っていました。


第2期 ビートルズへの挑戦(1966-1967)

 当時、チャート上では、ビーチ・ボーイズビートルズは競いあう存在でした。しかし、それはシングルだけのこと。まだまだ、アルバム=シングル曲集というイメージが強かった、当時のポップス界において、聴くためのアルバムを提示しはじめたのも、この2バンドでした。

 1965年11月に発表されたビートルズのRUBBER SOUL。それ以前からもBEACH BOYS TODAY!などで、トータル・コンセプトのアルバムを発表していたブライアンの我慢はこのRUBBER SOULで限界をきたします。ビーチ・ボーイズの他のメンバーがツアーで留守中に、スタジオ・ミュージシャンを使って、アルバムPET SOUNDSを作り始めるのです。

 ツアーから戻って来たメンバーが聴いたのは、サーフィンもクルマも登場しない音楽。ビーチ・ボーイズのヴォーカル、マイク・ラヴは犬にでも聴かせるのかと言い放ち、皮肉にもそれがPET SOUNDSというタイトルになります。

※マイク・ラヴは現在ではPET SOUNDSが最も好きなアルバムだと言っているそう。しかも、上記の「犬にでも〜」は間違いだとも述べているらしい。

 しかし、発表されたPET SOUNDSは、セールス的には芳しい成果を上げることはなく、焦ったレコード会社は、サーフィンのヒット曲を集めたベスト盤を急遽発売し、それがまた売れてしまったりします。当時、多くの人がビーチ・ボーイズにビートルズ的なものを求めていなかったことの証明でしょうか。

 しかし、月日が流れ、じわじわとPET SOUNDSの良さは、少しづつ理解されて来ました。今では多くのミュージシャンがフェイヴァリット・アルバムに挙げ、その影響を自分の作品で表現しています。

 もちろん、ビートルズ本人たちは、すぐにビーチ・ボーイズの変化を直感。自分たちのサウンドにも反映させ始めます。PET SOUNDS収録の"GOD ONLY KNOWS"のアンサー・ソングとして、ポール・マッカートニーが作ったのが、"HERE,THERE AND EVERYWHERE"とも言われています。

 PET SOUNDSを発表したブライアンは、さらに先を行こうと悪戦苦闘します。その成果が有名な"GOOD VIBRATIONS"。この曲によってビーチ・ボーイズは、アメリカ、イギリスともにビートルズを抜き去ります。そして、PET SOUNDSを越えるアルバムとして、"GOOD VIBRATIONS"を収録するアルバムSMILEの制作に入ります。

 ところが、ドラッグの多用や精神的なプレッシャーにより、ブライアンはついにアルバムを完成しないまま、その作業を放棄。一方のビートルズは、満を持してSGT PEPPERS LONLY HEARTS CLUB BANDを発表します。

【この時期の主な作品】

  1. PET SOUNDS1966(最高傑作)
  2. "GOOD VIBRATIONS"1966(シングル。SMILY SMILEに収録)
  3. "HEROES AND VILLAINS"1967(シングル。SMILY SMILEに収録)

1は、今では名作と評されているアルバム。ビーチ・ボーイズからイメージされるサウンドとは違いますが、聴けば聴くほど良さがわかるアルバムです。2、3は、次作"SMILE"のために作った曲。当時の録音技術を駆使したサウンドは、今聴いてもはっとするものがあります。


第3期 新たなサウンドの模索(1967-1971)

 アルバムSMILEを断念した頃、ジミ・ヘンドリックスがそれを宣言したように、すでにサーフ・ミュージックのブームは終わっていました。リーダーであるブライアンの創作意欲も欠落したビーチ・ボーイズは、なすすべもない状態。とりあえず、SMILEの曲を再編集したアルバムSMILY SMILEを発表し、急場をしのぎます。

 もはや、サーフ・ミュージックにも戻れなくなったビーチ・ボーイズは、よりハードなロック、フラワー・ムーヴメント、それらを横目で見ながら、次から次へと異なったタイプのアルバムを発表して行きます。

 まさに、模索期と言ってもよいでしょうが、それが90年代に入って再評価され、日本でも"渋谷系"と呼ばれたミュージシャンたちが、この時期の作品をフィーチャーした音楽を発表していました。そして今もその流れは静かに拡散し続けています。

【この時期の主なアルバム】

  1. SMILY SMILE 1967(実験的なアヴァンギャルドな内容。スマイルの別ヴァージョン)
  2. WILD HONEY 1967(BB5版ソウル・ミュージック)
  3. FRIENDS 1968(BB5版ソフト・ロック。ブアイアン本人は今でもお気に入りだそう)
  4. 20/20 1969(メンバー各自が曲を書きプロデュースした最初のアルバム)
  5. SUNFLOWER 1970(名曲が半数を占める、中期の最高傑作!)
  6. SURF'S UP 1971(環境問題などのメッセージ色が強いが穏やかなサウンド)

1は「SMILEの出がらし」と呼ばれている作品。実験的要素が強く、モンド的な音楽ファンには人気がある。2は、今で言うブルー・アイド・ソウル。ビーチ・ボーイズが演るソウルはそれなりに楽しめます。3は穏やかなポップスが中心の1枚。ソフト・ロックと呼ばれている範疇に入ります。PET SOUNDSを気に入った方は、この3と5をお聴き下さい。4は普通のポップ/ロック的。5、6も同路線。特に5は、かなり評価されています。今ではそれなりに評価されているこれらのアルバムも、チャート的には最悪の状況でした。詳しくはこちら


第4期 ブライアンの不在と復帰(1972-1981)

 かつての勢いを失ったブライアン・ウイルソンは、1971年頃から自宅のベッドに籠りはじめ、レコーディングにも部分的にしか参加しなくなります。残ったメンバーが知恵を絞ってアルバムを作りますが、なかなか良いものにはなりません。

 しかし、1976年頃、治療により回復したブライアンが復帰、15 BIG ONESというアルバムをプロデュースした後、ビーチ・ボーイズの新局面を見せるアルバムLOVE YOUを発表しますが、人間関係や精神的な問題から傷つき、再びスタジオから離れて行きます。

 結果的に、この10年間は、ブライアンの関与に比例して、作品の善し悪しも分かれていきました。音的には、かつてのビーチ・ボーイズとは異なり、ロック及びブルースの要素が増えています。

【この時期の主な作品】

  1. CARL & THE PASSIONS-SO TOUGH 1972
    (R&B、ソウル系の要素が強いがインパクト弱し。ここでメンバーは7名に膨れ上がる)
  2. HOLLAND 1973(オランダ録音 。迷いを感じる。おまけにブライアン作のアバンギャルドな組曲つき)
  3. 15 BIG ONES 1976
    (15周年&ブライアン復帰アルバムとしてセールス的には成功。カヴァーが多くまとまり弱し)
  4. LOVE YOU 1977
    (シンセベースのサウンド。ブライアンがフルプロデュースした傑作。しかし売上は・・・)
  5. M.I.U ALBUM 1978(マハリシ国際大学での録音。ボツにしたクリスマスアルバムを練りなおしたためか、意外に良質なまとまり)
  6. L.A.(LIGHT ALBUM) 1979
    (脱退していたブルース・ジョンストンが復帰し、BB5サウンドを新しく解釈。でもバラバラな仕上がり)
  7. KEEPIN' THE SUMMER ALIVE 1980(ブルースのフル・プロデュースで60年代懐古的サウンドを70年代末に再現。悪くはない)

この時期では上記でも述べたように、4のLOVE YOUというアルバムが評価されています。シンセサイザーをベースにした、コーラスの少ないビーチ・ボーイズ。ブライアンがどこまでやったのかは不明ですが、この時期のBB5とは明らかに違う完成度の高い音はBB5の歴史を語る上でははずせない内容。その他は「全アルバムを制覇・把握」したいって方以外には積極的にはおすすめできませんが、とりあえず上記の寸評を参考にしてください。


第5期 BB5復活とブライアンのソロ(1985-1989)

 そして時代は80年代に突入。ハードなサウンドが主体だった70年代に比べて、再びポップスが台頭しはじめます。ビーチ・ボーイズも、初期の曲を中心に再評価されるようになりました。

 1985年に、カルチュア・クラブで名を馳せたプロデューサー、スティーヴ・レヴィンがビーチ・ボーイズを手掛け、ボーイ・ジョージスティービー・ワンダーも参加したアルバムTHE BEACH BOYSを発表。デジタル・サウンドに乗って繰り広げられる、かつてのカリフォルニア・サウンドは、ちょっとしたヒットを記録し、ビーチ・ボーイズの復活を見せつけます。

 そして、1988年の映画『カクテル』の主題歌"KOKOMO"。"GOOD VIBRATION"以来の全米ナンバー1ヒットを記録しますが、実はその時、すでにブライアン・ウイルソンはグループを離れ、ソロ活動をはじめていました。

【この時期の主なアルバム】

  1. THE BEACH BOYS 1985
    (打ち込みで往年のカリフォルニア・サウンドを解釈。以外に聴ける内容)
  2. STILL CRUSIN' 1989
    ("KOKOMO"を中心に、新旧の映画使用曲+新曲集)
  3. BRIAN WILSON 1989
    (ブライアン・ウイルソンのソロ・アルバム)

1は第1期のサウンドを新しく解釈したアルバム。2は"KOKOMO"を収録したアルバム。今風のアメリカン・ポップスでもビーチ・ボーイズが成り立つことを証明しましたが・・・。2以上にビーチ・ボーイズ的なのが3のブライアンのソロ・アルバム。ポジティブなPET SOUNDSとも思えるサウンドは、いくらブライアンの声がしわがれ声になっても評価に値します。


第6期 ロストコントロールのすえに(1992-2000)

 結局、ビーチ・ボーイズとブライアンは、部分的な交流しかないまま、現在に至っています。96年あたりに試みたBB5としてのレコーディングを中断したまま、ブライアン、マイク、そしてアルは独自の活動を再開。そしてカールも亡くなった今、BB5が再び揃うことは、もしかしたらありえないのかもしれません。90年代に入って、ようやくPET SOUNDS〜SMILEの再評価が始まったものの、それは余計にブライアンのソロを推し進める結果にもなり、ファンとしては複雑な心境の人も少なくないのではないでしょうか。良い作品であろうと売れない不遇の時代を長く過ごした苦しみのすえ、作品に対してのバランス感覚がとれなくなったビーチ・ボーイたち。果たしてそれぞれのビーチ・ボーイズは、それぞれの道を歩んでいるのか、単に余生を楽しんでいるのか・・・。ビーチ・ボーイズをめぐる長き物語、その大団円は果たしてどんなカタチでやってくるのでしょうか?

【この時期の主なアルバム】

  1. SUMMER IN PARADISE THE BEACH BOYS(1992)
  2. I JUST WASN'T MADE FOR THESE TIMES BRIAN WILSON(1995)
  3. ORANGE CRATE ART BRIAN WILSON & VAN DYKE PARKS(1995)
  4. STARS AND STRIPS VOL.1 THE BEACH BOYS(1996)
  5. IMAGINATION BRIAN WILSON(1998)
  6. SALUTE NASCAR M.LOVE,B.JOHNSTON & D.MARKS OF THE BEACH BOYS(1998)
  7. LIVE AT THE ROXY THEATRE BRIAN WILSON(2000)
  8. PET SOUNDS LIVE BRIAN WILSON(2002)
  9. CALIFORNIA FEELIN' THE BEACH BOYS(2002)

1は、サーフィン・ブームに乗じて、デビュー曲を今風に再演したり、ラップ調の曲をやったりという内容。面白いが・・。2はブライアンの偉業を称える同名映画のサントラで、主に第2〜3期の曲をブライアンがセルフ・カヴァー。穏やかで渋い仕上がり。3はSMILE時代の共同制作者、ヴァン・ダイク・パークスとのコラボレーション。曲はすべてヴァン・ダイクのものだが、若々しさを取り戻したようなブライアンのヴォーカル+コーラスが聴ける。この時期でまずオススメするのはこれ。4はカントリーのシンガーが、ビーチ・ボーイズの名曲(主に第1期)をカヴァー。ビーチ・ボーイズがコーラスをつとめたという、ちょっと安易な内容。5はブライアンの奇跡のセカンド・アルバム。穏やかなAOR的仕上がりは賛否が分かれた。詳しくはこちら。6はブライアンのソロに対抗(?)したマイク主導のカバー集でノベルティものだが、一時期は日本の外資系ショップにも並んでいた。7はすっかりツアー慣れしたブライアンの2日間のライブを収録した2枚組CD。インターネットのみで販売されたが、やはりこちらも外資系ショップで時折見かける。ブライアンの音楽を楽しもうという設定が心温まる内容。詳しくはこちら。後に日本盤も発売。8は名アルバム「ペット・サウンズ」をそのまま演奏するというツアーを収録したCD。7以上に暖かい、そして長きツアーで熟練した演奏が聴ける。日本盤にはボーナス・トラックあり。9はブライアン編集のビーチ・ボーイズの最新ベスト。ベストとしての選曲は各年代を押さえたそつないものながら、最後にブライアンの最新スタジオ録音曲となる「カリフォルニア・フィーリン」が含まれるのが最大の特徴。日本では人気ドラマの挿入曲に使われたことも話題となった。


終わりに

これが、ビーチ・ボーイズについての概要です。これを読んで、少しでも気になる部分がありましたら、ぜひその時期の曲を聴いてみて下さい。音楽を聴くという行為は、結局、自分で自分に合うものを探し出す喜びにほかなりません。ビーチ・ボーイズがあなたにとって、その鉱脈となったとしたら幸いです。

改訂:2002/10/27

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