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date:03/04/08
Text by
kubo

映画『24HOUR PARTY PEOPLE』感想集ページ


はじめに・・・管理人kuboからひとこと。
トニー・ウイルソン著『仕事のイヤな人ほど副業をやれ!』(ウソ)

シネセゾン渋谷にて その昔、映画『トレインスポッティング』を見終わった後、「ああ、こんな風にNEW ORDERとかJOY DIVISIONの話が映画になんないかな? ファクトリー・レコードの話とか映画に出来るよ、たぶん!」。 酔って誰かにそう語ったことがあるのは、たぶんぼくだけではないだろう? そうでしょ? このページ見てる人ならきっと何人 かはいるはずだ。とはいえやっぱりそれは妄想。UKインディの1シーンが映画になるなんて、あ るはずがなかった。ところがそれが出来てしまっ た。2002年、あのダメダメなファクトリーのお話が映画になってしまったのである。

 ぼくは音楽にしろ映画にしろ、きちんと観たり聞いたりしないうちにあれこれ言っちゃいけない!と一応思っている。というか何度もそれで痛い目に遭った年の功でもあるだろう・・。でも、もうこの映画だけは別物だ。観る前から今年の1位だ。「かもしれない」 とか「当確」とかじゃなくて。 これで積年の苦労が報われたよう。もう人に説明するときに「実はね、ファクト リーってレーベルが昔あって・・」などと、あくびを誘う回りくどい説明をする必要 がない。この映画さえ見てもらえればいいのだ(たぶん)。

 この映画『24 hour party people』を早速観てきました。ぼくの住む街ではいつ公開されるかわからないので、意を決して飛行機に乗って渋谷まで行ってきたわけ。でまあ。映画の内容なんですが、期待を裏切らなかったですわー。まず文句をつけようがない最大の点はこれが実話をベースにしてるってことですね。なんせ実話なんだから・・。もちろん演出力とか脚本の良し悪しとか演技の良し悪しとか、カメラワークとか、そういうのを語る余地もきっとあるのだろうけど、やはり観ているうちにひしひしと感じてくるのは、あの80年代の10年間、イギリスのある地方の街のほんのどうでもいい出来事一つひとつが、結果的に世界に足跡を残すムーブメントになった、という事実が見せつけるパワーなわけですね。雑誌とかレコードの解説とかで断片的に知っている知識がスパスパッと繋がる瞬間に、ひとり「おお〜」と声を出しそうになったり(すみません1回は声を出してしまった)、隣りにいる妻に「あれあれ・・」と指で合図したり・・。ただ、ぼくら(このページを見てるみなさんもそうだろうが)のように予備知識のある人間には楽しいだろうが、何も知らない人がどういう感想を抱くのかは、非常に興味がある。そのへんの感想も知りたいところだ。

 ただし、注意しなきゃいけないことがある。そのヒントは、映画館でも売っていた同名の本『24アワー・パーティ・ピープル』(トニー・ウィルソン著/ソニー・マガジンズ/ISBN4-7897-2006-3)に隠されている。この本、ぼくはてっきり原作だと思っていた。「トニーのやつ、自伝まがいのもん出しやがって。それが映画になったのか・・」てな感じにね。ところがこれ、ノベライズ(映画の文章化)なんです。自分がほぼ主人公に近い映画を、本人がノベライズ? どうです? 何か感じるでしょ? だってあのトニー・ウイルソンですよ・・・。

 一般的に映画というのは、どうしても事実を誇張するものだ。わかりやすくするために情報を整理したり、計らずもおおげさになっていたり・・。それは作る側も見る側も無言の了承事項というか、そういうものだという前提がある。だから、この映画『24 hour party people』にもさまざまな逸話が盛り込まれているが、映画の冒頭の説明にもあるように、いくつかはフィクションで、でも本当でもある、ということになっている。実際に、ファクトリーに関わった人々の数々の証言をもとに、映画の各シーンは構成されていて、いくつかの逸話が合体しているシーンもあるのだという。

 で、それをノベライズするんですよ。本人が。トニーはいくつかの場面で「ここは実際にはこうだった」と映画のシーンが必ずしも正しいわけではない事を数カ所指摘している。が、しかしほとんどの箇所は映画をそのまま文章に落としている。これは「映画制作」という過程が偶然生んだ誤解(いい意味で言えば神話化というか・・)を、「事実」であるかのようにすり替えてしまう効果を生むことに成功しているのだ。

 実際に、音楽雑誌「snoozer」の2003年4月号掲載のピーター・フックへのインタビュー(by 田中宗一郎)によれば、トニーが映画をノベライズしたことに、
「よくもそんなことを。(中略)あの映画のすべてが本当じゃないってわかっているじゃないか?」
 と怒り噛みつくフッキー。それに対してトニー・ウイルソンは、
「伝説は事実よりも偉大なんだよ」
 とうそぶいている。

 そう。ファクトリーの物語からは切っても切れないトニーのペテンは、今でもちゃんと続いているのだ。この本だって「FAC424」だしさ。どうです?すごいでしょう。だから批判の声ももう出始めているけれど、映画や本の逸話がそっくりそのまま事実だと思わない方がいいです。すべてはトニーのペテンなのです。

 ここで一つ言いたい。ぼくはこの映画と本で、トニーのことが大好きになってしまった。多くの人がぼくと同じ感想を持つとは限らない事は承知している。けれども以前、たとえばファクトリーがつぶれ、バンドも解散しそうになりながらもなぜNEW ORDERのメンバーがトニーに好意を持っているのかが、マッタク理解フカノウだったのだが、その疑問は氷解した。こいつのやってる事は人間らしい。本業のテレビの仕事がイヤで、余興のつもりではじめたレコード会社がビッグになっちゃって、でも結局つぶれちゃって、今でもイヤだったテレビの仕事を続けている男。生きた伝説のようでありながら、ただの世の中の歯車でもある男・・。そこにある種のリアリティや、憧れさえ感じるのは何だろうか、平凡のような日々の中にも何かしらの可能性があることを示唆しているからに違いない。

 というわけで、この映画、見ようによっては何かの啓示を得るかもしれないし、最初から最初までその嘘くささにゲラゲラ笑って過ごすこともできるだろうし、あるいは全編で流れる音楽に身を任すことだってできる作品だとぼくは思っている。それはまるでファクトリーそのものを表しているようにも思える。

 ここで皆さんにお願いです。できることなら他の方の感想なども聞いてみたいです。これから映画を見られる方にとって良いも悪いも立体的にわかるようにしたいので、頂いた声を並列に並べていきたいと思っています。批判もOK! いろんな価値観があって当然。誰もが勝者なのです。HNつきで感想をぜひメールください。

この文章を百頭人氏およびMD氏に捧げます。
●皆さんから頂いた感想●

24アワーズ・パーティー・ピープル考 (by CIAN)
冬尻監督ありがとう (by ペペロンチーノ)
エエもんみしてもらいました (by hokama)
映画上映というよりはライブ (by サメ)
この映画で初めて知りました (by LOTTE)
ファクトリーは全然死んでない。その証拠がこの映画です(by Iさん)
たとえウソばっかりだとしても(笑)音楽は生き続ける・・・(by syun)
暇とお金があったらこう使え、という見本です(by 百頭人)


【トニー・ウイルソンって誰?】
ファクトリー・レコード(正式には、Factory Communications LTD.)の元社長。本業はテレビ司会者だが、余興ではじめたクラブが発展してレコード会社になり、80年代中〜末にはNEW ORDERやHAPPY MONDAYSなどをメジャーチャートに送り込んだ。この映画は、ファクトリー・レコードの栄華盛衰を描いた、涙と笑いと栄光と挫折のストーリーである(田口トモロヲ風に読んでね)。



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